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この日記について

この日記は、他のリソースから転載したものが大半です。
2005年3月以降の日記は、mixiに掲載した日記を転載した内容が中心です。一部は実験的に作成したblogに書いた内容を移植させています。
2001年の内容の一部は、勤務先のweb日記に記載したものです。
1996年〜2000年の内容の多くは、旧サイトに掲載したphoto日記を転載したものです。
1992年6月〜99年9月の日記の大部分は、パソコン通信NIFTY-Serveの「外国語フォーラム・フランス語会議室」に書き散らしていたものを再編集したものです。ただし、タイトルは若干変更したものがありますし、オリジナルの文面から個人名を削除するなど、webサイトへの収録にあたって最低限の編集を加えてあります。当時の電子会議室では、備忘録的に書いた事柄もあれば、質問に対する回答もあります。「問いかけ」のような語りになっている部分は、その時点での電子会議室利用者向けの「会話」であるとお考えください。
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■ 2014年02月 アーカイブ

2014年02月22日

またまたフィギュアスケートの話題かよと呆れられるかもしれないけど(^_^;)、熱狂的なマヲタもうざいけど、FSで結局3位じゃんとかSPで自己ベスト出しても金取れてないだろ的な「冷静」な意見も、フィギュアスケートという競技の特殊さを無視してるようなので、書かずにはおられなくなった。
フィギュアスケートは採点競技なので不可解なところはけっこうある。その根源が技の出来映えに加算されるGOEなのだけど、もっと不条理なのは演技構成点PCSだよね。これは旧採点システムの芸術点にあたるが、浅田真央はSPでこれに救われ、FSではこれで4位になれなかった。
PCSはスケーターの「格」でベースが決まると言われている。表現力なんて突如として進化したり、ある回のレースだけ抜群に優れているなんてことはないはずなので、それは必然的といえるだろう。バンクーバー以前は一流スケーターは7点台後半が「相場」で、キムヨナと浅田真央が8点台の出る別格扱いだった。
これがバンクーバー五輪で一度「底上げ」されている。ロシェットにも8点台が付いたし、キムヨナには9点台が付くようになった。それ以降もこの「相場」が維持され、トリノ/バンクーバーではほとんど出なかったFS130点以上がバンクーバー/ソチでは普通に出るようになったわけだよ。技術的には浅田以外は誰も3aに挑戦しなかったし、3-3だってセカンドが3Tで当然という流れなので、技術構成点はGOE以外に上がる要素がない。なので「底上げ」はPCSの相場観の変化によるところ大なわけだ。
で、どうやらオリンピックでPCS相場を上げる流れがあるらしい(推測)。実際に2013年GPFとソチのSPを観てみるとわかる。
http://www.isuresults.com/results/gpf1314/gpf1314_Ladies_SP_Scores.pdf
http://www.isuresults.com/results/owg2014/owg14_Ladies_SP_Scores.pdf
ソトニコワと浅田を比べるとクリアじゃないかね。GPFのSPで2位だったソトニコワは、演技構成はソチとおなじでTESは37.53点、PCSは30.85点。PCSの個々のジャッジは7点台が中心なので、「格」的にはキムヨナ・浅田・コストナーの3強より下扱いになっている。
一方の浅田は3aに < が付いた他はノーミスでTESは37.45点、PCSは34.91点。浅田のPCSはバンクーバー後に一度大きく「相場」を下げているので、3強の中ではいちばん低い感じだった。8点台後半が中心だったはず。
で、ソチのスコアを見ると、ソトニコワのPCSは9点台がぞろぞろ並んで35.55点まで上がっている。たしかにGOEもGPF時より高いので演技的にはよりクリーンだったはずだけど、GPF時と比べて15%アップというのは不自然だろう。また、アメリカ代表の二人も8点台ばかりになっているので、やはりPCSの全体相場が上がったと判断するのが合理的だと思われる。
SP16位に終わった浅田はPCSだけなら4位の33.88点で、個々のジャッジは8点台が中心になっている。ノーミスだったコストナーが36.63なので、もし浅田が自己ベストを出せるぐらいの演技だったら(3aをクリーンに決めるという前提)TESで40点、PCSで36点ぐらいとなるだろうから、トータルで76点、つまり過去のベストを更新してるはず。なので、「自己ベストを出しても云々」は、「過去に自己ベストを出したような会心の演技をしていたら」という意味であればナンセンスということ。他の選手のスコアを見ればわかるけど、五輪はノーミスで演じればたいがい自己ベストを(しばしば大幅に)更新できる。
で、142.71点というFSだけど、TESだけなら2位、PCSだけなら5位というのはすでに書いたとおり。ノーミスに近い演技なのにSPよりPCSのランクが下というのは常識的には変だよね。旧採点方式では個々のジャッジでも選手間のランクを付けねばならなかったので、有力選手がそろう最終グループまでは高い点数を「温存」しなければならなかった。どうやらPCSにもそれがあるようで、滑走順が早いとある程度は抑制的になっているように思われる。実際、キムヨナのSPをみると、コストナーに比べて抑えられているという印象がどうしてもある。
ということは、「SPで自己ベストだとしても」については、そんな演技をできていれば76点台を出してSP1位になっとるわいってことだし、そうなれば滑走順は最終グループなのでFSのPCSはもう5点ぐらい多く出るはずだから148点ぐらいになり、トータルで224点、金メダル争いに絡んでくることになる。
……という議論はもちろんナンセンスだよね。「たら・れば」自体がナンセンスなのは承知の上だけど、要するにフィギュアスケートという競技は、五輪で自己ベストが「出やすい」とか、おなじ演技でも滑走順でスコアが変わりうるという特殊性があるので、「たら・れば」が二重にナンセンスとなるってことを言いたかったのだよ。
あと、メダルが獲れなかったのは云々の議論にしても、そんなの最初から金メダルを取るためのベスト戦略でなかったことは、長年フィギュアスケートを観てきたファンには当然わかっていたし、浅田陣営も理解していたはず。ジュニア時代に3Lz-3Loを跳んでいたソトニコワがSPでは3-3では最も簡単は3T-3Tに落としていたことからもわかるとおり、難しい演技構成にする戦略は、メダル狙いではむしろマイナスが大きい。
もしも浅田陣営がソチのメダル獲得を最優先にしたのであれば、3aを捨てて3Lzの踏切矯正を最優先させ、SPは3Fp-3T、3Lz、2aというジャンプ構成とするだろうし、FSも3Fp-3T、3Lz、2a-3T、3Lo、3S、3Fp-2Lo-2Lo、2aとするはず。だけどこんな演技は浅田の演技じゃない、と本人は判断したんだよね、たぶん。長年のファンもそれを十分承知しているからこそ、ソチでは金は難しい、ロシア勢やコストナーの出来次第ではメダルも危ういとわかっていたはず。だからこそ、史上最も難しいFSの成功を喜んだのではないか、と思う次第だ。


2014年02月21日

ここ10年ほどのフィギュアスケートは、男女ともタレントがそろった本当に奇跡的な時代であったと思う。わしら50年代後半生まれ世代にとっては、おそらく札幌のジャネット・リンの転倒スマイルでフィギュアスケートを知り、その数年後に頬紅たっぷりな佐野稔が世界選手権3位に入って日本と世界の微妙な距離感にときめき、同時期にやはり世界選手権の表彰台に上がった渡部絵美を見て、「日本女子選手はケツがでかくて太股ふとく規定が苦手」という刷り込みがなされ、80年代に入って伊藤みどりという突然変異の天才の登場により「やはりゴム鞠体型の選手が跳び跳ねないと世界と戦えない」と確信したものだろう。その直後に佐藤有香が美しい滑りで世界選手権を制しても、伊藤みどり的突然変異でないと世界とは戦えないと思った。
そんな常識を破ったのは村主章枝だろう。2003/2004シーズンにGPFを征し、ついに芸術性で世界に対抗できるスレンダーな女子がいることがわかった。さらに同世代に荒川静香がいて、すぐ下に太田由希奈、安藤美姫というジュニア王者がいて、その安藤美姫が、すぐに追い抜かれるから早くメダル取って引退したいとまで恐れた浅田真央がいることを知ったわけである。しかもみんな体型が渡部絵美的でないところが、時代は完全に変わったのだと思わせたよな。女子は2003年から3年連続でJr.世界選手権を征したし、2002年も2位と3位を取っていた。男子も2002年に高橋大輔、05年に殿、06年に小塚と、ジュニア世代が一気に開花したんだよね。
女子では太田が怪我に泣き、安藤が理不尽なバッシングで一時期伸び悩むなか、浅田真央は体型変化も克服し、シニア転向後からトップ選手であり続けてくれたわけだよな。まあ、ジュニア選手権は2010年の羽生、村上の優勝を最後に表彰台は田中刑事のみ、女子に至っては2011年以降、表彰台の延べ9人中7人がロシア人という状態なので、少なくとも日本女子の時代は浅田真央とともにオワタとなることは残念ながら間違いなさそう。同時代にキムヨナという浅田とはタイプの違う天才もいて、2005-2014は本当に奇跡的な10年だったし、長年愛着をもってみていると、こういう幸運にも恵まれることがあるのだな、と思ったものである。


2014年02月20日

いやあ、凄い演技だったねえ。ほんとに3a、3Fp-3Lo、3Lz、2a-3T、3s、3Fp-2Lo-2Lo、3Loを全部跳んじゃったよ。オジサンびっくり。ええもん見せてもらいましたわ。オーバーな言い方になるけど、生きているうちにこんなジャンプ構成を女子では二度と見られないかもしれないもんな。
細かなジャッジを確認したところ、3aは認定でGOEで若干のプラス、3Fp-3Loはセカンドに < が付き(スローで見たときはむしろ3aがunderで3Fp-3Loの方が回っていたように見えたが)、あれだけエッヂエラーに苦しんでいた3Lzもクリア認定、2a-3Tはセカンドで < のケアレスミス、あとはすべてクリアという結果だった。で、ステップとスピンはすべてLv.4という神演技で、これはもう歴史に残るプログラムと演技でしょう。twitterでジョアニー・ロシェットが激賛し、ミシェル・クワンが泣いたと呟いていたわ。< がなければ150点台もあったね。
ISU公認のシニア大会で3aが認定されたのは伊藤みどり、トーニャ・ハーディング、中野友加里、浅田真央の4人、3-3でセカンドに3Loを入れて公認されたのがスルツカヤ、安藤美姫、浅田真央、ソトニコワの4人、それだけ難しいジャンプ要素を一つのプログラムに入れ、なおかつFpとLzの両方も入れるってだけでも凄まじい構成なわけだよね。
あのキムヨナでさえ3Loは苦手で4年前からプログラムには入れていない。全5種類の3回転ジャンプ+3aは伊藤みどりだけだからな。もう順位はどうでもいいわ。これだけ超絶的なプログラムを成功させた選手がいたということがとにかく凄い。

ISUのジャッジを改めてみたら3Lzにはeが付いていた(残念)。でも、このスコアは永久保存する価値があると思うよ。全5種類の3回転+3aが盛られていて、しかもステップとスピンのすべてがLv.4という驚異的な演技構成だからね。TESに限定すればソトニコワに次ぐ2位だよ。PCSは5位だけど、前日のどん底SPの4位より落ちているのは、これが滑走順の影響でしょう。最終グループで演じていたら74点前後はもらえたはずなので、やはりこれは「150点プログラム」だったわけです。
http://www.isuresults.com/results/owg2014/owg14_Ladies_FS_Scores.pdf


昨夜は放送を観るのが怖くて、予定どおり録画をセットしただけで寝た。

で、起きてすぐに結果を確認できるように、webでISUのEntries/Resultsページを開いたままMacをスリープさせておいた。そして朝の衝撃は国民全体とおなじ。わしの記憶をほじくりまわしても、浅田真央がSPで二桁順位だったことはない。もしかしたらノービス時代の12歳のときに特別推薦で出場した2002年全日本選手権では、と思って調べてみたが、このときでさえもSPは9位だった(LPのミラクル演技で順位を7位まで上げた)。つまり、ソチの結果は浅田真央史上初の出来事なので、本人が茫然自失になるのも無理はないだろう。
トップと19.5点差は、FSで逆転が不可能なわけではない。バンクーバーでキムヨナと浅田真央のFSの差が19点弱だったので、その逆パターンが起きれば生じうる。そして実際に浅田がFSで計画している3a、3Fp-3Lo、3Lz、2a-3T、3s、3Fp-2Lo-2Lo、3Loというジャンプの構成は、すべてがクリーンに決まればTES+PCSで150点台後半もありうる。ただ、このプログラムに成功できる可能性は5%程度だろうし、夜の放送で映された公式練習の映像をみたかぎりでは、3aはめろめろ、3Fp-3Loは3Fp-2Loに変えそうな雰囲気だった。
まあ、ここに至ったらFSのノーミスを願うばかりである。メダルのことは女神に委ねよう。取れなくても、この10年ものあいだ、長年のフィギュアスケートファンを魅了し続けたことへの感謝に変わりはない。ほんと、こんな凄い女子スケーターは今後半世紀は現れないと思うぞ。
メダル争いに関していえば、わしはカロリーナ・コストナーに肩入れしてしまうんだよな。バンクーバーでメダルを狙えた実力者でありながら、2009年のロス世界選手権ですっかりと調子を落とし(ほぼホーム状態のキムヨナの後に滑走して「魔物」に取り憑かれた説がある)、バンクーバーでの最終順位も16位という惨敗だった。そこから見事に復活し、昨年の世界選手権でも優勝し、27歳のソチは彼女にとっても集大成のはず。SPの演技も優雅で流麗、FSのクリーンに決めてメダルを手にしてほしいね。



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