フランスの高等教育機関は多くの留学生を受け入れています。最も多いのはアルジェリアやモロッコなどのマグレブ諸国からの学生、次いでドイツ、イタリア等のヨーロッパ近隣諸国でしょう。アジア系は語学学校でこそかなり多数を占めていますが、大学等ではまだ小数派でしょう。
言葉の問題で殆ど苦労がないのは当然ながらマグレブ留学生です。文語表現で微妙な違いがあるだけのようですから、まず言葉が障害になることはありません。反対に、四苦八苦を強いられているのはアジア系学生、特に中国系の学生と言えましょう。技術系の領域になると、テクニカルタームの問題が彼らに重くのしかかってきます。この領域になると実用レベルでは英語とフランス語の用語がチャンポンになっていますので、場合によっては仏漢及び英漢両方の辞書が必要になるようです。この点、我々の身近で外来語が氾濫していることは、文化的には不幸なことかもしれませんが、それなりに実利的側面もあるのです。
案外ととまどいが多いのは英語圏の学生です。かれらは日常コミュニケーションで苦労することは比較的少ないのですが、やはりテクニカルタームで苦労することが多いのです。何しろ英語は世界の共通語という認識が強いですから、時事用語に案外弱点があるようです。技術系では英語がそのまま用いられることが多いとはいえ、経済用語は当然全てフランス語が用いられますから、このあたりでしばしば戸惑いを感じるようです。
結論的に言いますと、高等教育機関では語学力と同じレベルで専門知識が重要になります。こんなことは当たり前と思う人が多いでしょうが、留学の際は案外とこの点が見落とされがちなのです。辞書レベルで多くの単語を知っているよりも、専門用語を深く知っている方が重要と言っても構わないでしょう。あまり語学力に目が言って、肝心の専門知識の表現力が置いていかれては、それこそ本末転倒です。教授と議論できてもマルシェで値切ることができない、そんな留学生が案外と多いのも事実でしょうが、反対にマルシェで値切れても専門分野で議論できなければ無意味なのです。